『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を読んだ

会社の先輩に薦められたのがきっかけで、この1〜2週間ほどで読了した。

結論から言うと、とても良かった。

元々この手のビジネス書やマネジメントを題材にした本は敬遠していたのだけど(後述)、4月から会社でチームリーダーをやることになって、チームの運営をどうしようかと考えていたので、丁度よかった。

内容紹介

この本は1984年に発行された『ハイ・アウトプット・マネジメント』に加筆・修正して、1996年に発行された『インテル経営の秘密』の復刻版らしい。
その題に違わず、著者であるアンディがCEOとしてどのようにインテル社を経営してきたかの、根底にある考え方が事例とともに描かれていると言えよう。

理系出身の著者らしく論理的な文章で、抽象化が上手く、事例が的確で、陳腐な(自明な)内容は少ないと感じた。

想定読者層

この本が読者層として強く想定しているのは「ミドル・マネジャー」と呼ばれる人たちである。
日本語にすると、「中間管理職」となるだろうが、それだけでなく、組織の中で知識や技能に秀でた「ノウハウ・マネジャー」という人たちも加えたいとしている。
その人たちも組織の複数の人々に影響を与え得るからである。

本書の一部では人事考課など本当の管理職しか実施しないであろう仕事について取り扱っているが、その他の7〜8割の内容は、これらの「ノウハウ・マネジャー」の人たちにとっても参考になるだろうと思った。*1

そういう意味で、ターゲットの裾野がとても広い本である。

章立て

第1部では、単純なモデルケースとして「朝食工場」なる工業会社を考案し、生産管理に関する考え方を述べている。

第2部では、「マネジャーのアウトプット = 自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット」という等式が出てくる。
マネジャーは自分の組織の中の「小CEO」として、テコ作用(=レバレッジ)を最大化するように行動すべし、と述べられている。

第3部では、組織が数十名以上の規模に肥大化した状況を考え、組織構造や人をどのように所属させるか、といった話が述べられている。

第4部では、動機付けや人事考課、採用、研修といった話題が出てくる。

1 on 1の実施方法

インテル社ではマネージャーと部下の間の1 on 1ミーティングを実施している。
これの意義や効果的な実施方法については、主に第2部 第4章「ミーティング」で述べられている。

この本を読む何ヶ月か前に下の記事を読んだことを覚えていたが、この記事の元ネタが『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』だったことに、読み返してみて気づいた。

1 on 1ミーティングの意味は色々あると思うけど、新米のチームリーダーとしては、メンバーからチームの課題など情報収集できる貴重な機会だと思っている。

経営の問題とは関係ないけれど、本の中で「ワン・オン・ワン・ミーティングは家庭生活においても役に立つ」と述べられていたのは面白かった。

感想

チームの大小を問わない「マネジメント」に関する多くの仕事について概観した本であり、ロジカルでわかりやすく実践的なので、色んな場面で参考書的に使えるのではないかな、と思った。

また、「ノウハウ・マネジャー」的な人はたぶんどこの組織にもいるが、その価値を適切に評価することは難しそうである。
だが、その人たちが組織のアウトプットに寄与しているケースは多いだろうから、ちゃんと計測して評価に反映できると良いなぁと思った。

終わりに

自分やチームのテコ作用を最大化させられるように行動したいものである。

次に読むマネジメント関係の本の候補としては、『エンジニアリング組織論への招待』が気になっている。

余談:マネジメント系の本を敬遠していたこと

これの主な理由として、第一には、職種がソフトウェアエンジニアで、これまで管理職に就いた経験がない、というのもある。
他方、マネジメント系の本については、なんとなく、経験則に基づいた話が多かったり、考えればわかるような自明のことをわざわざ書いているような印象を持っている、というのも理由に含まれる。

でも、『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は良かったので、きっと良い本は良いのだろう。

先日、下のようにつぶやいたが、過去からもっと学んでベストプラクティスを実践したいものだ。


*1:日本のIT業界では「〜に詳しい男性」という意味でよく「〜おじさん」と称される。